海藻コラム

糖尿病・血糖コントロールのカギは腸にあった!

糖尿病・血糖コントロールのカギは腸にあった!
〜血糖値は「腸内細菌叢」で下げる〜

最近、消化器医学界で話題となっているのが、「腸内環境」と「食物繊維」「糖尿病」との関連についてです。

アメリカ・ルイジアナ州立大学のフランク・グリーンウェイ教授らは、水溶性食物繊維と抗酸化物質であるアントシアニンを合体させた「腸内フローラに効く糖尿病の新薬(GIMM)」を作り糖尿病予備軍、あるいは初期の糖尿病患者に朝夕の2回摂取させたところ、食後のインスリンが分泌し易くなり、血糖値の上昇が抑制されることを確認しました。この結果についてグリーンウェイ教授は、「GIMMの摂取後、水溶性食物繊維が腸内細菌により作られた短鎖脂肪酸に、糖尿病を直接的に改善する効果があるのでは?」と述べています。

たまねぎやごぼうなどの野菜に含まれる水溶性食物繊維であるイヌリンは、腸内で分解されて短鎖脂肪酸(腸内細菌によって作られる脂肪酸の一種。酪酸、酢酸、プロピオン酸など)になって腸内を酸性にして腸内環境を改善したり、免疫力をコントロールすることもわかってきました。

さらに、血糖コントロールと腸内細菌との間に関連があることも報告されました。血糖コントロールに関与している腸内細菌名までは特定されなかったものの、腸内フローラを改善することで血糖値が改善する可能性が高いことが確認されました。すなわち、血糖コントロールが良好な人では善玉の腸内細菌が多く、なかでも代謝や免疫機能を高める腸内細菌が多かったのです。一方、血糖コントロールがよくない人では、腸内の善玉菌が少なく、体に悪い影響を及ぼす悪玉菌が増加していました。つまり、糖尿病の改善には、腸内細菌叢(腸内フローラ)が大きく関与していることが明らかとなったのです。また、糖尿病治療薬であるメトホルミンの血糖値降下作用にも腸内細菌が関与していることが、神戸大学の研究チームにより明らかとされており、腸内細菌叢が血糖値に影響を与えていることを示しています。

食物繊維と糖尿病との関連性を考えるうえで見落としてならないのが、日本人の食事内容の変化です。現在の糖尿病の罹患率は、昭和30年〜30年代と比較すると35倍以上にも増加をしています。当時の多くの日本人は、麦飯(米5〜8対大麦5〜2)を3食摂っていました。しかも、一日の摂取エネルギーの中で穀物(炭水化物)が占める割合は、現在よりもはるかに高く、70%前後もありました。ただし、現在は、この割合が50%を切っています。要するに、炭水化物を多くとっていたにもかかわらず、麦飯の時代は糖尿病に罹る人が少なかったのです。これは、麦飯に入った大麦の食物繊維、特に水溶性食物繊維を多く摂っていたためであると考えられています。

水溶性食物繊維は、排便量を増やし健康的な腸内細菌叢の形成に貢献するだけでなく、血糖値の上昇抑制効果にも大きく貢献しています。だからこそ、糖尿病予防の観点からも、水溶性食物繊維を多く含む「海藻」「キノコ」「穀物」「果物」を毎日の食卓に少しずつ取り入れて、血糖値があがりにくい腸内細菌叢にすることをオススメします。(吉)